南京医科大学、試験官内ES細胞からマウスの健康な精細胞作成に成功1/1

南京医科大学研究チームが 、マウスのES細胞精細胞作成に成功しました。すでに孫マウスも生まれているとのことで、生殖の再生医療に大きな光が見えてきました。

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南京医科大学(中国・南京)のQuan Zhouらの研究チームが 、マウスのES細胞(embryonic stem cells=胚性幹細胞)から「精細胞の作成に成功しました。今月25日のCell Stem Cellに掲載されています。

− 精細胞
精巣中で、精原細胞から変化した1個の精母細胞が減数分裂を行って生じた4個の細胞。それぞれが、精子となる。


今回、精細胞として働いた細胞は、マウスの卵細胞を問題なく受精させ、マウスは健康な子孫を産むことができました。

ES細胞や、iPS細胞による配偶子の成長の復元は常に「生殖生物学の大きな課題」であり続けていますが、今回の実験成功は、生殖能力に乏しい男性でもきちんと働く精子を育める可能性に繋がり、不妊治療に非常に重要な突破口を開くものとなります。

ES細胞と、iPS細胞

ES細胞
あらゆる組織に分化でき、細胞分裂を繰り返して自己複製する能力を併せ持つ細胞。
iPS細胞のような「万能細胞(仮想の治療材料になる細胞)」のひとつで、再生医療への応用が期待されている。


ES細胞は、遺伝子操作にも非常に適応力が高く、既にマウスなどを使っての遺伝子操作実験に広く利用されています。

マウスから人間まで、全ての哺乳類は精子と卵子の結合によって子孫を残します。受精してから胚を成長させ続けるため、精子と卵子は、増殖 → 成長 → 成熟という複雑な段階を経て行かねばなりません。

健康な子孫を残すための絶対条件は、精子と卵子。

この2つの配偶子(接合して新しい個体を作るもの)は、最初は通常の細胞の半分の染色体数(23対)しか持たず、受精によって初めて、通常の細胞と同じ染色体数(46対)を持ちます。

配偶子の誕生は、細胞分裂過程では生殖細胞にしか起きず、また卵巣精巣という生殖腺でのみ発生する特異的なプロセスです。

このプロセスは、真核生物の細胞分裂の様式の一つである 「減数分裂として知られています。
今回の実験で、マウスのES細胞から、生命力があって健康な子孫を残す卵子をどうやって作るのか?試験管内での減数分裂が機能的に実証されました。

実験内容

ペトリ皿で作られたマウスの始原生殖細胞(発生の初期に出現し、将来的に卵細胞あるいは精細胞になる原始生殖細胞)は、完全な減数分裂を見せ、精巣に移植されると同時に、「精子」となった。

ただ、人間で同じことをすると腫瘍が発生する危険があるので、試験管できちんと働く精細胞を作る必要があるのです。

再生医療の至適基準になる、可能性あり

幹細胞から配偶子を作る試み」は、これまでにも幾つかあったのですが、この南京医科大学のチームは、今回初めて試験官内で完全な減数分裂を再現しており、試験官内での配偶子作成におけるあらゆる評価基準を満たしているため、今後の「至適基準となる可能性があります。

至適基準とは、総合診療において医師間で十分に専門的な標準とみなされ得る基準のことです。

チームは、マウスの精巣細胞とES細胞を一緒に成長させ、精子を作るのを促進する化学物質やホルモンにさらしました。

結果としてできた精子(精細胞として働く細胞)を、卵子に注入すると、90%以上の確率で受精卵ができました。健康な赤ちゃんが生まれて普通に育ち、今では彼らの子も産まれています。

まだ試験官内での、成功に過ぎない

本研究は、「セルトリ細胞唯一症候群(無精子症)」の方、それに過去に受けた手術や感染症、抗ガン剤などの悪影響などで精子が作れない男性には、非常に希望となるだろう結果です。

ですが、完全に試験管内限定で成功した実験であることを忘れてはいけないでしょう。

人間に応用される可能性が十分あるものなので、あと幾つかは研究結果として明らかにする必要があります。今回の実験では、試験管内で成熟した精子を作ることはできていません。

無精子症の男性の多くは、射精後の精液には精子が含まれていないものの、精巣には精子を持っています。
こういう人は手術を受けたとしても、精子が未成熟な「精子不動症」が治らないことが多いです。

卵細胞室内精子注入法(体外受精に使用する精子を、一つだけ選びだして卵子に注入する方法)を用い、精子不動症の精細胞を卵子に注入した結果は、到底、出生率回復に期待がかけられるような数値ではありません。

Zhouらの今回の研究データによると、マウスの生(き)のままの精細胞を使った実験の受精率は9,5%でしかなく、精子不動症の精細胞から採ったES細胞を使った試験管内の実験では、さらに低い約2,8%の受精率しか得られていません。

マウスと人間では、細胞の初期段階に違いが。

本研究成果はマウスでの実験であり、マウスと人間では、精子と卵子の発展の初期段階に違いがあると言われています。

人間での体外受精に、これを応用するのは時期尚早に過ぎると思われますが、試験管内できちんと役割を果たす精細胞を作る試みは進化し続けていることを証明したこのたびの結果は、「再生医療という魅力的な分野の今後に、大きな基礎を形成すると思われます。

※ これは『The conversation』に掲載されたノッティンガム大学の不妊・生殖医療分野の准教授、Nicholas Raine-Fenningらの当研究に対する所見です。

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左:試験官内 右:自然状態


【参照】

 

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